葉山の小さな家庭菜園

固定種・在来種でアジア料理の野菜を育てる|プランターの土づくりから始める春の支度(葉山の小さな家庭菜園 Vol.2)

春を待ちながら、土に触れる時間

2月の後半。
日差しはやわらかくなってきたけれど、空気はまだ少し冷たい。

野菜はじっくり時間をかけて育つ季節。
けれど私は、この時間がわりと好きです。

何も起きていないようで、土の中ではきっと小さな生きものたちが春の準備をしている。

今日は、種まきに向けての土づくりと、今年育てたい”種”の話をしたいと思います。

先日訪問した、てんとう農園さんの畑。寒さの中、野菜がギュッと味を濃くして育つ冬の畑もまた美しい。

冬の土を目覚めさせる「寒ざらし」と微生物

今回育てるのは、1台のプランター。

土は新しく買わず、これまで使っていたものを再利用しようと思います。
(くたびれた土を前にして、「もう一度、力を貸してね」と声をかけるような気持ち)

再利用するためにやってみたのは「寒ざらし」

寒い時期に土を掘り返し、凍ったり溶けたりを繰り返させることで、土壌物理学や微生物学の観点から、

・土がふかふかになる
・病原菌が減る

といわれています。

そしてそこに撒いてみたのは、「カルスNC-R」という微生物資材。

冬の間なかなか分解が進まない中、続けていたコンポストの発酵を促すために買ってあったのですが、土づくりにもよさそうということで、混ぜてみることにしました。

左)土を掘り返したところ / 右)この中に白っぽい粉上の微生物資材が入っています

スコップで土をひっくり返すたび、かすかに立ち上る土の匂いに癒され、自然の力に、少しだけ手を添える。

ああ、春はもうすぐなんだな、と感じます。

庭からアジアへ。テーマは“アジアン・ダイニング”

さて、前回宣言した、今年のテーマ 「アジア料理を楽しむプランター」

庭の片隅から、アジアンダイニングへ。
そんな小さな妄想をふくらませながら、種を選びました。

今回は、静岡県浜松市の種屋さん「光郷城 畑懐(こうごうせい はふう)」さんからお取り寄せ。

「在来種」「固定種」を大切にされているお店です。
国内産の種に力を入れ、自分たちで納得したものだけを届けている。その姿勢に、ぐっときました。

選んだのは、

・ホーリーバジル
・エンサイ(空芯菜)
・錦海パクチー
・南部大長南蛮(唐辛子)
・チンゲンサイ
・九条細ネギ

この並びを眺めているだけで、口の中がすでにアジアの香り。

庭から摘んだホーリーバジルでガパオ。 空芯菜のにんにく炒め。刻みたてのパクチーで生春巻き。

考えるだけで、楽しすぎます(笑)

固定種・在来種という、時間を受け継ぐ種

ちょっとだけ、種のことをお話しさせてください。

スーパーに並ぶ野菜の多くは、「F1種」と呼ばれる交配種といわれています。
育てやすく、生産が安定し、傷みにくいため輸送にも耐えやすい。より生産しやすく、流通しやすい特性を持つ親の掛け合わせでうまれたお野菜たちです。

一方で、今回選んだのは主に「固定種」や「在来種」。

固定種は、何代もかけて選ばれ、性質が安定した種で、そこから採れた種をまけば、また同じ野菜が育ちます。

在来種は、固定種の中でも、その土地の風土に適応しながら、農家さんが代々守ってきた地野菜。

いわば、時間を受け継いできた種。

パクチーの種は半分に割って水に漬けてからまくと発芽しやすいそうです

味が濃いとか、香りが野性的だとか、そんな話も聞きます。

そんな特徴の中でも、私が惹かれたのは、“つないでいける”こと、何より”味がおいしい”ということでした。

小さな庭で、わたしができること

一般的には育てにくいとされる、固定種や在来種。

「F1種」は育てやすく、生産効率が上がってきた一方で、遺伝的多様性の喪失の懸念もあるようです。
(一方的にいい悪いはいえないと思うので、育ててみながら様々な視点から考えたいところ)

わたしは自分の庭という小さな場所で、

・種をまき、育てる
・種を採る
・また種をまき、育てる

そんな循環を試してみたい。

小さなお庭の、ほんの小さなことかもしれないけれど、その積み重ねと種といういのちをつなぎ、生物多様性を守ることにもつながるのかもしれない。

何より、自分で育てた種が、また芽吹く瞬間を見てみたいなと思っています。

2月の終わり。葉山は、もう少しで春です。

次回は、いよいよ種まきのお話。
土の上に、小さな希望を置く日が近づいています。

また、つづきを。

何年か前のパクチー。今年はもっともっとたくさん育つといいな。

ひと箱のプランターに、おいしい夢を詰め込んで。〜葉山の小さな家庭菜園 Vol.1〜

はじめに〜冬の澄んだ空気の中で、春を想う〜

こんにちは、FARM CANNINGのチコです。

暦の上ではまだ冬。葉山の風もまだ冷たさを残していますが、土の中では少しずつ、次の季節への準備が始まっているのかもしれません。

新しいコラムの連載を始めさせていただくことになりました。 シリーズ名は、「ひと箱のプランターに、おいしい夢を詰め込んで。」

これは、私が自宅の小さなお庭で繰り広げる、ささやかな「家庭菜園の実験記録」です。

葉山の冬は空気がとても澄んでいます

完璧じゃなくていい。「育てる」を楽しむ実験。

私が土に触れる暮らしに目覚めたのは、大学3年生の頃。 もうかれこれ十数年になりますが、今でもいわゆる「Green fingers -緑の指 -」を持つプロフェッショナルではありません。
※green fingers…植物を育てるのが上手な人のたとえ

忙しい日々に追われ、枯らしては肩を落とし、一度は諦めかけ……それでも、ふとした瞬間に「やっぱり育てたい」という想いが芽吹き、また土に向かう。そんなサイクルを繰り返してきました。

5年前に葉山に引っ越してきてからは、大きなプランター3台といくつかの植木鉢、そして小さな花壇が2つだけの、今のスタイルに落ち着きました。 広い畑はありません。それでも、多い時には30種類もの植物たちが、小さなお庭でひしめき合いながら、季節を教えてくれます。

春先に出てきた紫水菜の芽。とってもかわいいけど、このあと虫食いだらけになりました・・・泣

「ひと箱」という小宇宙

今回、コラムを書こうと思ったのは、「育てる暮らし」がくれる豊かさを、皆さんと共有したかったから。

たとえプランターたったひとつでも、そこには小さな自然の循環があります。 種をまき、芽吹きを待ち、香りを思い切り吸い込み、瑞々しいハーブや野菜を食卓に並べる。 そんな「自然との対話」を、忙しい日々の隙間に少しだけ取り戻してみる。それだけで、暮らしの解像度が少し上がる気がするのです。

私はプロではないので、教科書通りの「正解」はお伝えできないかもしれません。 その代わり、等身大の私が「やってみたい!」「楽しい!」と感じた実験の数々を、このコラムに綴っていきたいと思います。

葉山2年目のときに植えたスイスチャードと、根っこから再生栽培した小ねぎ。初夏は青々してにぎやか

今年の夢は「アジアン・ダイニング」

さて、記念すべき連載第1弾。 今回は「ひと箱のプランター」にフォーカスして、欲張りに私の食いしん坊な夢をぎゅっと詰め込んでみたいと思います(笑)

テーマは、「アジアン料理を楽しむプランター」。 

家庭菜園の定番といえば大葉(シソ)やバジルですが、今回は少し旅する気分で。 タイ、ベトナム、韓国……あの大好きなアジアの風を自宅で感じるために。 「大葉よりも、パクチーを」 そんな合言葉で、香り高いハーブや野菜たちを育ててみようと企んでいます。

ヤムウンセンが大好き。カオソーイもおいしいですよね。葉山のタイ料理屋「Baan Rey」さんはタイすきもおすすめ。

まだ寒い今から準備する理由。

家庭菜園で人気のトマトやピーマンなど「夏野菜にはまだ早いのでは?」 と思われるかもしれません。

確かに、一般的な夏野菜を植えるのは4〜5月頃。そして彼らが輝くのはほんの3〜4ヶ月。 でも、せっかくの「ひと箱の夢」です。できるだけ四季を通して長く、その恵みを味わいたい。

だからこそ、まだ寒さの残る今から準備を始めます。 満開の桜と共に最初の収穫を迎え、夏、そして秋へと続く長いリレーを楽しむために。 これは、季節を少しだけ先取りする、私なりの実験です。

一緒に始めませんか?

このコラムは、成功も、時には失敗も含めた、リアルな記録です。 これから月1回のペースで、春に向けた準備や、植物たちが育っていく様子をお届けします。

もしよかったら、皆さんもプランターを「ひと箱」だけ用意して、私と一緒においしい夢を詰め込んでみませんか?

次回は、具体的な「アジアン・プランター」の設計図と、選んだ種のお話を。 どうぞ、お楽しみに。

Written by スタッフ ちこ