代表コラム

Celebrate Life! ― 10年かけて、自分に返ってきた言葉

こんにちは、代表の西村です。
ファームキャニングは、2026年3月で10周年を迎えました。

設立当初は我が家の子どもたちもまだ小さく、

起業をするぞ!

というよりも

できる範囲で農家さんの助けになれることをしてみよう、
いつ辞めても誰かに迷惑をかけないよう、身軽に始めよう。

そんな、小さな小さなスタートでした。

それから10年。ずっと掲げてきた言葉があります。

ファームキャニングの理念でもあり、合言葉でもある「Celebrate Life!」です。

畑を手伝っていた頃に見つけた可愛い人参

畑の中で降ってきたインスピレーション

これは、以前毎日のように畑に通っていた頃に生まれた言葉です。

今から12年ほど前、私は都内から葉山に移り住み、ご縁があって無農薬無化学肥料で栽培する農家さんを紹介してもらいました。

その農園が本当に心地の良い自然に囲まれた場所で、とれたての野菜のおいしいこと。

当時はまだ新規就農で人手が足りないということを聞いて、「ならば出荷のお手伝いをします」と私は小さな次男をおんぶしながら通い始めました。森のなかで野菜を育てる、ゆったりとした時間の流れる場所で時にキジや野うさぎを見かけるような農園。

日々自然や植物と向き合っていると、ある時期になるときちんと種が芽を出し、花を咲かせ、実を結び、やがて枯れていく。そして土に種をこぼし、次の世代へと命のバトンを渡していく。そのそばには、さまざまな虫や生き物がいて、それぞれが関わり合いながら、一つの生態系が生きている。

その光景を見ていたあるとき、私に突然、ある気づきが訪れます。「自然の営みとは、こういうふうにできているのだ」と。

畑には無数の生き物がひしめきあっている

今、私たちがここにいる奇跡

小さな虫も、植物も、生き物も、「何かの役に立とう」と頑張っているわけではありません。ただ、それぞれが自分の命を生きることが、結果としてほかの命を支えている。そしてこれは、人間も同じなのではないかと思ったのです。

私たちもまた自然の一部であるならば、生まれたときからすでに、この大きな命の営みの中にいる。生まれてきていること自体が、もう十分に尊く、祝福されるべき奇跡なのだ!

そんな考えが体全体に降りてきたような、瞬間的に理解したと言えるような、そんな不思議な感覚に襲われたのです。

だから私は、ファームキャニングを立ち上げた後にメッセージとして「Celebrate Life」という言葉を大切にすることにしました。

このフレーズには、二つの意味を込めています。一つは、自然の中に生きる、すべての命を祝福しようということ。もう一つは、私たち自身の人生を謳歌しようよ、ということ。

ファームキャニングが取り組んでいるケータリングも、びん詰めの製造も、畑のコミュニティづくりも、一見するとそれぞれ違う事業に見えるかもしれません。けれど、その根底に流れているものは、いつも同じです。

私たち自身も、出会った人たちも、それぞれの人生を謳歌できたらいい。そして、足元にある自然や小さな命を大切にする「セレブレーション」に、一緒に参加してもらえたらうれしい。そう願っています。

コロナ禍で始めた畑クラブ

余裕がなくなると見えなくなっていた、大切なこと

この10年の間には、コロナ禍もあり、大変な時期もありました。活動が広がり、関わる人が増えるほど、物事は少しずつ複雑になっていきました。そしてそれに伴い、自分自身の未熟さや力不足を、痛いほど感じることもありました。

もっと頑張らなければ。

もっと成長しなければ。

もっとできる自分にならなければ。

思うように進められないことが歯がゆくて、私自身の価値を見いだせなくなっていた時期も、ずいぶん長くありました。うまくいかない現実を前に自分を責めたり、自信を失ったりしながら、「もっと何かができる自分」になろうともがいていたのです。

あれ?等身大の自分のままで、循環の中にいるんじゃなかったっけ?

”Celebrate Life!”、これはまさに私自身へのメッセージではないか……?

何かができるから価値があるのではない。

何もしなくても、命そのものに価値がある。

畑で降ってきたその感覚が、10年の時空を超えて今の私にブーメランが戻ってきたような思いでした。

いろんな経験を一緒に乗り越えてきてくれた大切な仲間達は宝物

これまでも、これからも。

気づけば私のまわりには、とても素敵なスタッフや仲間たちがいます。ファームキャニングの活動を応援し、さまざまな形で関わり、関係を育んでくれている人たちがいます。

私一人の力では到底ここまで来られなかったし、ファームキャニングはいつの間にか、私一人のものではなくなっていました。

まさに一つの命が、それぞれの命と出会い、関わり合い、やがて一つの生態系をつくっていく。

振り返れば、ファームキャニングそのものが、そんな営みになっていたのかもしれません。

お互いを尊重し合える世界は、きっと、足元にある小さな命を大切にすることから始まると信じています。

すべての命を祝福し、自分自身の人生も思いきり謳歌する。

これからもファームキャニング、人と自然とのつながりを、一つひとつ丁寧に育んでいきたいと思います。


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一緒に働く前に、一緒に過ごす時間 〜食と対話を大切にする仕事場の話

こんにちは、ファームキャニング代表の西村千恵です。
たった1人で軽い気持ちで始めた小さな会社、ファームキャニングも気づけば今年で10年。
これまで様々な方々に支えられてきました。

未熟な私にも関わらず、「手伝うよ」と愛の手を差し出してくれ、
その時々に支えてくださった一人一人には、今でも感謝しかありません。
誰一人欠けても、ここまで辿り着けませんでした。

今年の周年を機に、あまりこれまで外に話していないファームキャニングの「中のこと」を
コラムに書いていこうと思います。

今回は、ファームキャニングのアペロのこと。
ちょっとした暇つぶしに、読んでみていただけたら嬉しいです。


食いしん坊たちの、仕事の後の おたのしみ

最近のファームキャニングでは、
季節ごとや「何かおいしいものを食べたいね」というタイミングで、アペロをします。

アペロは、食事の前に軽く飲んだり食べたりする時間のこと。

私たちはそれを、仕事終わりに集まれる人が集まって、おいしいものを囲む時間として楽しんでいます。

その日シフトに入っていなかった人が、別の仕事を終えてからアペロだけに来ることも。
全員が毎日同じ場所にいるわけではないのでなるべく集まりやすい日に、来れる人でサクッと開催します。

夕飯を待つ家族がいる人もいるし、仕事の後にちゃんとした食事の用意は面倒だなという思いもあり、「夕食会」でなく「アペロ」にしたことが気楽に集まれるポイントとなりました。

今年の1月は「新年アペロ」と称して、みんなで鍋を囲みました。
去年はおでん。今年は「水餃子どう?」という一言から始まって、モッツァレラチーズや貝、エビ、梅と鶏肉など、いろいろ包んで、気づいたらお腹いっぱい。

アペロの時間は、仕事の話はほとんどしません。笑
とにかく食べて、飲んで、笑って、他愛もない話をする。
今年はお箸おみくじを引いて大盛り上がりで、私は大吉を引いて、ひとりご満悦でした。

飲んで、食べて、笑って、生きる。

このアペロの文化は、10年ほど前にイタリアのワイナリーで体験した時間が原体験になっています。
夕暮れの風を感じながら、ワインと軽いおつまみを楽しむ。
特別な目的があるわけではないけれど、その時間をゆっくり味わう。

あの空気感が、今でもとても好きです。

とはいえ、私たちのアペロはそんなゆったり、まったりとした大人時間のようなものではありません。

ファームキャニングのスタッフたちはとにかくよく食べ、よく笑う。
笑うというよりも、すぐ爆笑の渦になる。
そしてアペロという割に、食べ過ぎている笑。

もし一緒にこんなアペロの雰囲気を味わってみたいなと思った方は、
ぜひこちらも読んでみてください。
https://www.farmcanning.com/wine-club

農家さんの白菜でキムチ作りをして、出来上がったキムチとポッサムとマッコリを楽しんだキムチアペロ

いつも終わった後は爽快感すらあるような楽しい時間なのですが、最近思うことがあります。

こんなふうに日常的に爆笑することって
案外当たり前じゃないのかもしれない、と。

そして誰かと一緒によく笑うということは、
自分ひとりの閉じられた世界を一気に開く破壊力があるな、と。

思考を働かせるのではなくて、
「おいしい」「楽しい」「おかしい」という幸せな感覚にどっぷり浸かる時間は
私たちにとってのリセット時間、そして健康的なエネルギー源になっているように感じています。


「私」と向き合うことも大切にしたい

ファームキャニングには、もうひとつ大切にしている時間があります。
月に一度の全体ミーティングの最初に行う、スタッフ各自の短い振り返りの時間です。

この1ヶ月を振り返って、どんな時間を過ごしてきたか。
どんな気持ちでいたか。

シートに書き出してみながら、自分の振り返りをシェアする時間

忙しい日々の中では、なかなか立ち止まって自分を見る時間を持てないことも多いですが、
この時間があることで、少し客観的に自分を見つめ直すことができます。
私自身も好きな時間です。

すべてを共有する必要はありません。
自分がシェアしたいことを話します。
すると、誰かの話を聞いて、「それ、自分にも当てはまるな」と思ったり、「次はこうしてみよう」と思えたり。
人の話を聞くことで、自然と視野が広がっていく感覚があります。

こうした時間は、私が強い意志を持って始めたというより、
スタッフの一人の「こういう時間があってもいいんじゃない?」という提案から生まれました。

仕事仲間の前に、まず個人として

私が通っていた中学・高校(一貫校でした)では、
生徒や先生が自分の思っていることや考えていることを作文として、朝礼時にクラスや学年の前で話す、「感話」というユニークな時間がありました。

「私」という個人として、学年全員の前で自身のことを話すということは
なかなか勇気がいること。
けれど、自分らしく在って良いという肯定的経験にもなりますし、
話を聴く側としても、人の多様性を受け入れ合う土壌を培われたと思います。

そんなわけで、私はファームキャニングの仕事場でも
仕事の役割だけで存在するのではなく、
あくまで一個人としてお互いを分かり合うために
この振り返りの時間はとても意味のあるものになるに違いないと判断したのでした。

まかないのランチも大事な時間

ゆるりと導入してみてどうだったか?

言わずもがな、メンバーの相互理解になるだけでなく、自分自身のことを理解するための時間としてもとても大切な時間になっているように感じています。

忙しいとなかなか自分のための時間は後回しになってしまいがち。
けれど自分のことを大切にできなくては、ひとのことを受け入れる余裕は生まれません。

自分を大切にする人同士が一緒に働くことは、長い目で見たときに、良い関係や良い仕事につながっていくのは必然のこと。

喜びも迷いも、ときには弱さも、少しずつ共有できる。
そんな暖かい心のつながりを、小さな仕事場の仲間だからこそ、大切にしていきたいと思うのです。